『言葉はこうして生き残った』(河野通和 著 ミシマ社 2,592円)
「考える人」(新潮社)編集長のメールマガジンの書籍化である。
人気のメルマガなのでご存じの方も多いと思う。毎週1回配信で、硬軟新旧とりまぜた、たくさんの本が紹介される。
唸ってしまうのは、作家や時代背景まで興味深く語りながら、本の核心について「ネタばらし」が決してないこと。むしろ「これは自分で原書にあたってみなくては」と思わせ、書店に向かわせ購入させてしまう。そんな力を持つ文章なのである。
次に唸ってしまうのは、本書『言葉はこうして生き残った』がもつ力、である。
私はメルマガをほぼプリントアウトして読み、保管する。正直なところ、書籍で同じものを持つのはどうか・・・と思わないこともなかった。
ところが、一読して大反省。確かに出会ったことのある文章たちが並んでいる。はずなのに、編集され書籍化されると、光の当たり方が変わる。文章のたたずまいが変わる。私はどこを読んでいたのだろうかと思う。
これが「編集」という仕事のもつ力なのか、と教えられる思いがする。
もとより、著者の河野通和氏は編集者歴35年以上の大ベテラン。氏は「編集者」という仕事について、こんなことを話されている。
あくまで何かを表現している人が主役で、こちらは黒衣(くろこ)です。
「匿名への情熱」という言い方がありますが、
卑下でも何でもなく、黒衣であることは誇りになります。
生き甲斐になります。
(ミシマガジン 今月の特集①『考える人』編集長・河野通和さんインタビュー 「編集者」を続けるということ 2015・2.18より)
「黒衣である誇り」がたっぷり感じられる丁寧な編集。装丁もすっきりと美しい。
本書を読むことで、どれだけの本に出会えることか。光みなぎる言葉に出会えることか。
この1冊は、無数の出会いを与えてくれる。
ぜひ、手元に置いて人生の道しるべとしてほしい。
(本の学校事務局 山本瑞絵)
『絵本で出会った子どもたち~心が育つ瞬間をみつめて~』
(足立茂美 著 今井出版 1,296円 2016年8月発行)
足立理事は地元・境港市において、読み聞かせグループ「おはなしポケットの会」の代表を務め、子どもへの読み聞かせの実践を長く続けていらっしゃいます。
本書では48冊の絵本を紹介。語り口は一貫して優しく温かですが、視点はシャープで深い。絵本の中の子どもたちを例に挙げ、子どもたちの心の育ち・素晴らしさなどを描き出します。のみならず、作者の思い・大人の登場人物(登場人物の親たち)の心情など、絵本の底に深く流れるものを読み解きます。
「被災地の夜空には、それぞれの方の<ひさの星>が、その方々に向かって輝いているような気がします。」(本文49ページ『ひさの星』紹介文より)
「人生の悲しみや苦しみの多くは人間関係によって生じると言われますが、その悲しみや苦しみもまた、人間関係によって癒され救われていく」
(本文113ページ『きいちゃん』紹介文より)
「子どもはさまざまな問いに出会い、すぐには解けない問題や悩みを抱えながら、それを一つ一つ乗り越えて成長していくのかもしれません」
(本文134ページ『おじいちゃんと森へ』紹介文より)
絵本にはこんな深いメッセージがこめられていたのか・・・改めて目の覚める思いがします。 著者の洞察の深さが伝わってくる1冊です。 ぜひ、本書でたくさんの絵本と出会ってください。そして、心の糧を得てください。
ご注文・詳細は下記へ http://imai-printing.blogspot.jp/2016/08/blog-post_4.html
講演会
2015年5月10日(日)13:30~15:30
歴史の「峠」ともいうべき、混迷する現代社会の危機的状況を踏み越えるために、米子が生んだ偉人、宇沢弘文先生の教えを「導き星」にして、「新たなルネサンス」運動を巻き起こし、未来の意味を取り戻す道を探ってみたい。
講師:神野直彦(東京大学名誉教授)
◆日時:2015年5月10日(日)13:30~15:30
◆会場:本の学校 2階 多目的ホール
◆共催:テゴネット(鳥取県西部広域交流ネットワーク)・よなご宇沢会・NPO法人本の学校「知のネット山陰」・(株)中海テレビ放送
◆後援:(株)今井書店
テゴネット (TEL:0859-29-2854)
下記の日程で、理事会・通常総会を行います。
理事・会員の方は事務局からの郵便物・メーリングリスト等をご確認ください。
理事会
5月9日(開会)11時50分~14時40分(閉会)
於:本の学校今井ブックセンター
通常総会
5月22日(開会)18時00分~19時00分(閉会)
於:本の学校今井ブックセンター
総会終了後に、場所を移して懇談会を予定しております。
10月11日付で会員の皆様あてに会報をお送りいたしました。 また、今回の封書には会費の領収証・会員証等を同封いたしておりますので、必ずご確認をお願いいたします。
未着、封入の漏れ等がありましたら、お手数ですが本の学校事務局までお問い合わせください。
2014年10月10日発行の「NPO本の学校 会報誌第5号」の6ページにおきまして、
パネリスト・高須大輔様のご所属する書店のお名前が
「豊文堂」と記載されておりましたが、正しくは「豊川堂」です。
お詫びとともに訂正させていただきます。
特定非営利活動法人本の学校 理事長 永井伸和
このほど、「特定非営利活動法人本の学校(NPO本の学校)」を設立いたしましたので、お知らせいたします。
本の学校は、市民の読書推進や図書館づくりの運動と、山陰の今井書店グループの創業120周年記念事業を源として、1992年に構想されてから20年にわたり、任意団体として地域の読書環境づくり、出版文化・産業シンポジウム、出版業界人・書店人研修、書店の未来像づくりなどの活動を行ってきましたが、このたびNPO法人となることで、これまで以上に公共的な組織として、知の地域づくりを合言葉に活動していきます。
【目的】
地域の人々の生涯にわたる読書活動と出版業界人の研修の場の提供、これまで以上に読者から信頼され、読者を育てていく空間としての書店ビジョン作り、図書館や公共施設、書店、地域の読書活動などが連携した読書環境整備などを目指します。
【背景】
かつて全国で2万3000軒といわれた日本の書店も、現在は1万3000軒余に減少しました。一方で、アマゾンを中心としたオンライン書店は、人々の生活の中に定着しつつあり、出版産業の側面からみても、人々が出版物に触れる環境は大きく変化しています。
果たして、人々にとって本との豊かな出会いが実現される社会とは、どのような社会でしょうか。おそらくそれは、出版社や書店といった産業的な側面だけではなく、それらが地域の図書館や、読書を愛する人々と結びつき、お互いに支え合うような社会ではないでしょうか。
そのためには、地域において、それぞれ本にまつわるプレイヤーが、バーチャルとリアルも含めてお互いに補完し合い、人々に本を手渡すのはもちろん、本の情報や、書き手と触れあう場など、人々がさまざまな形で本に関わることが、今以上にできやすい環境を整備することが必要だと思われます。
本の学校では、こうした視点から、業界の活動や市民の読書活動、行政の取り組みなどの、どこか一方に寄るのではなく、それらが連携できる形を模索するために、活動をしていきます。
【活動内容】
「生涯読書活動」推進事業
「母親の胎内から老後まで,生涯を通して読書を楽しんで欲しい」という思いのもとに,勉強会や実践活動,情報交換・情報発信を行い,さまざまなイベントを通じて年齢や立場を超えたネットワークの輪を広げます。
「出版の未来像」創造事業
7月の東京国際ブックフェアに合わせて行っている「出版産業シンポジウムin東京」などを通じ,これからの出版界・図書館界のあるべき姿について考える場を提供します。
「出版業界人」育成事業
山陰での「出版業界人基本教育講座(春講座)」,東京での「本の学校連続講座“本屋の未来を創造する”」や,未来の書店のあり方を考えるワークショップ,新時代の書店人育成のためのテキスト・シラバス作成などの活動を行います。
「学びの場」拡充事業
市民と地域の自立を育む図書館,書店,教育研究機関などの協力による知の地域づくりと,地域や組織を越えたネットワークによる学びの場を拡充します。
上記の4つの枠組みで、下記のような事業を行います。
「出版業界人基本教育講座」(5月・山陰)
鳥取県米子市の本の学校施設で、全国から応募した書店人を中心とした出版業界人に、講座形式で2泊3日の研修を行います。講師は現役の書店人、編集者、作家、研究者などで構成します。本年も5月7~9日の3日間での開催を予定。任意団体の時代から18回目を迎えます。
「本の学校出版産業シンポジウムin東京」(7月・東京)
東京国際ブックフェアが行われる東京ビッグサイトの会議棟で、出版文化・産業の課題や将来のビジョンを話し合うシンポジウムを開催します。今年は7月7日に本の学校NPO法人化を記念して、「本との出会いを創り、育てるために―『本の学校』はなにをめざすのか」をテーマにメインシンポジウムと4つの分科会を開催します。
連続講座「本屋の未来を創造する」(隔月開催・東京)
魅力的な書店空間(本と出会う空間)を創り出すのは、人の力に他なりません。日々、顧客と接し、本を選択して仕入れ、店のコンセプトや顧客の嗜好を勘案しながら陳列する。そんな地道で専門的な仕事は、マニュアル化やシステム化が難しい領域です。連続講座では、長年そうした仕事に携わってきた書店人に、自らの仕事や書店人生を語ってもらうことで、将来を担う人材に、その志や覚悟、考え方などを伝えていこうという試みです。
「本の学校」生涯読書をすすめる会(毎月定例会・山陰)
「母親の胎内にいる時から老後まで、本との出会いによる豊かな暮らしを」をテーマに、講演会・研修会等の開催、会報「Book&Life」の発行など、広く読書の楽しさや大切さを伝える活動を展開しています。また、会員(読み聞かせ団体、図書館・学校図書館・行政の関係者、書店人、個人)相互のきめ細かな情報交換・情報発信をとおして、各地域における読書推進活動が豊かに行われるよう、いつでも協力し合えるネットワークを整えています。会報「ブック&ライフ」年3回発行、公開講演研修会年2回開催。
書店ビジョン策定・モデル書店作り(東京)
本の学校は、日本出版インフラセンター(相賀昌宏代表理事)が2011年に経済産業省の委託によって1年間をかけて書店の将来展望を検討した「フューチャーブックストアフォーラム」の書店ビジョンワーキンググループに参加しました。この報告書は本年3月末に公表されますが、本の学校では、次年度以降も引き続きビジョンの具体化、モデル書店作りに取り組みます。